風の強い土曜、赤は15度から ── ブルゴーニュの値段の外側で、ピノの秋が始まる

風が夏の残りを運び去る日
9月19日、土曜。東京の空は朝から曇に覆われ、湿度は87パーセントまで張りつめたまま。南寄りの強い風が街を吹き抜け、ベランダの椅子が軋み、洗濯物が帆のように膨らむ。気温は24度。真夏の重さには届かず、深秋の澄み切る前の、両方の匂いを混ぜた風だ。しかもこの日は、敬老の日の月曜を挟んだ三連休の初日である。キンキンに冷やした白とロゼを飲み流してきた一季の終わりに、ワイン好きの机の上には静かな宿題が一つ積まれる。そろそろ赤に戻りたい。だが、まだ重い赤は暑苦しい。風のように軽く、秋の入り口に似合う赤はないか。
ピノ・ノワールは、赤の中の「最初の秋」
その問いに最も近くにあるのは、いつだってピノ・ノワールだ。赤ワインのなかで最も薄い色、最も軽やかな歩み。単寧は絹のように細く、酸が背筋を伸ばし、薔薇とベリー、そして雨上がりの森の土の香りが層になる。15度前後に少し冷やせば、残暑の午後に飲んでもけっして重くない。「赤なのに、白のように冷やせる」——ピノは季節の境界に立つ品種である。しかもピノは、土地の翻訳機と呼んでいい。自分の主張をほとんど語らない品種であり、だからこそ、植えられた土地ごとにまったく違う文章を書く。翻訳が上手い産地は、ブルゴーニュだけではない。
価格の壁と、その外側の知らせ
ただし、ピノを飲もうとすると、多くの人はまずブルゴーニュの価格の壁にぶつかる。面積の狭さ、格付けの序列、そして世界的な需要の偏り。銘醸畑の値はとうに生活の価格を離れ、特別な日のための数字になっている。そこへ今週、ワイン・エンスージアスト誌が一つの知らせを載せた。「あるフランスの地方が、ブルゴーニュの価格タグなしで世界級のピノを作り上げている」というのである。これは単なる珍しい話ではなく、決定的な話だ。ブルゴーニュで研鑽を積んだ醸造家たちが各地へ散り、石灰質の土壌と冷涼な光を持つ産地が、現代の醸造でピノの繊細さを確実に引き出すようになった。壁の外側に、同じ品種の別の文章が書かれ始めている。そして実利の話もできる。同じ予算なら一本ではなく二本開けられるのだから、土曜の昼のテーブルでは、その二本目こそが味覚への投資になる。
三連休の午後に探したい四本
ならばこの連休、壁の外側で探してみよう。まずロワール、サンセールの赤。ソーヴィニヨン・ブランの聖地が、実は古くからピノの認定畑も持つ。アルフォンス・メロの「ラ・ムシエール」ルージュは、ビオディナミの旗手が書く鋏のような酸と黒果実のサンセール・ルージュで、白の名声の陰に隠れた実力派だ。同じくドメーヌ・ヴァションの赤も、世界級の出来を半値以下で置いてある。アルザスならジン・フンブレヒトの「ロシュ・カルケール」。石灰岩の畑のピノで、薔薇とチェリー、しっとりした落ち葉の香りが、曇天の午後にぴたりとはまる。ジュラの山あいなら、ドメーヌ・ティッソのアルボワ・ピノ・ノワール。冷涼な夜の涼しさがそのまま酸になって瓶に眠っている。いずれも15度に少し冷やせば、鰆の塩焼きの身の甘さにも、焼き秋刀魚の脂にも静かに寄り添う。軽い赤は、秋の食卓の最初の客である。いずれも国内の専門店やネットショップで見つけやすい品ぞろえであり、探すこと自体が連休の楽しみになるはずだ。
グラスを、帆に立てる
夕方、風が少しだけ秋の匂いを帯びる。洗濯物を取り込み、グラスを冷蔵庫に立てる。15度とは、冷蔵庫から出してグラスの中で数分待った頃の温度だ。注いだ瞬間の涼しさが、持ち上げるたびにゆっくりとほどけていくのが、この品種の飲み方である。ブルゴーニュの値段の外側で、ピノの秋はもう始まっている。風の強い土曜の午後にその一冊を見つけたなら、三連休の最初の乾杯は、もう十分に秋のそれだ。夏の名残に帆を張り、秋の最初の赤を15度で注ぐ。それが、暦より先に季節を飲むということである。







