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ラーメンの後のピノ・ノワール。深夜2時の背徳マリアージュ

深夜2時。ワイン会の後に行くラーメン屋で、私はいつもピノ・ノワールを密かに持ち込んでいる。

これは告白だ。
ワイン会主催者としてのプライドも、マリアージュの理論も、全部脇に置いた上での、純粋な告白。

豚骨ラーメンの後に飲むブルゴーニュのピノ・ノワールは、この世で最も背徳的で、最も幸福な味がする。

始まりは「最終電車を逃した夜」

あれは確か、ワイン会を始めて1年目くらいの頃だった。

会が盛り上がりすぎて、気づけば終電を逃していた。残ったのは私と常連の二人。三人ともほろ酔いで、どこか食べに行こうという話になった。

深夜の渋谷。開いている店なんて限られている。結局、駅近くの24時間営業のラーメン屋に転がり込んだ。

ワイン会で開けた最後の1本——ブルゴーニュのヴィラージュクラスのピノ・ノワール——がまだ3分の1ほど残っていた。私はそれをバッグに忍ばせていた。「もったいないから持ち帰ろう」という軽い気持ちだった。

ラーメンが来た。濃厚な豚骨。替玉はデフォルト。

ラーメンを啜りながら、ふと思った。あのピノ、今飲んだらどうなるだろう。

店員の目を盗んで(すみません)、バッグからボトルを取り出し、水のコップにこっそり注いだ。

深夜のラーメン屋でワインを飲む

豚骨の後にピノが来ると、何が起きるか

一口目。

口の中にはまだ豚骨スープの脂とコラーゲンの膜が残っている。そこにピノ・ノワールが流れ込む。

——あ。

ピノの酸味が、豚骨の脂を切る。でも、「切る」というより「洗い流す」に近い。脂のしつこさがすっと消えて、代わりに赤い果実の余韻が広がる。そして、豚骨スープの旨味——あのグルタミン酸の深い旨味が、ピノの果実味と合流して、第三の味を生み出す。

甘くて、旨くて、少し酸っぱくて、とんでもなく幸せ。

理論的に説明しろと言われたら、こうなる。豚骨スープの脂肪分がピノの渋みを中和し、ピノの酸が脂肪を乳化して口当たりを軽くする。同時に、豚骨のアミノ酸とワインのグリセリンが相乗効果を起こし、旨味を増幅させる。

でも、理論なんてどうでもいい。美味いものは美味い。

なぜ「背徳」なのか

ワインの世界には、暗黙のヒエラルキーがある。

ブルゴーニュのピノ・ノワールは、「繊細で、知的で、上品な」ワインということになっている。合わせるなら、鴨のコンフィ、仔牛のロースト、あるいはコンテチーズ。星付きレストランの白いテーブルクロスの上で、適温で、正しいグラスで、然るべき敬意を持って。

それを——深夜2時のラーメン屋で、水のコップに注いで、替玉と一緒に流し込んでいる。

背徳以外の何物でもない。

でも、背徳だからこそ美味いのだ、とも思う。

ワイングラスとラーメンの共演

ワインは「正しく」飲まなくていい

ワイン会を主催していると、よく聞かれる。

「ワインって、難しいですよね」
「合わせる料理とか、温度とか、グラスとか、色々あるでしょう?」
「間違った飲み方をしたら、恥ずかしいですよね?」

答えはいつも同じだ。
「美味しいと思ったら、それが正解です」

でも、これを本気で実践するのは、意外と難しい。知識が増えるほど、「正しい飲み方」に縛られるようになる。グラスの形、サービス温度、デキャンタージュの時間——すべてが「こうあるべき」という枠を作る。

深夜のラーメン屋でピノを飲む行為は、その枠を壊す。
壊した瞬間に、ワインの本当の楽しさが剥き出しになる。

最近のベストは、味噌ラーメン×ジュヴレ=シャンベルタン

あの夜以来、「ラーメン×ピノ」は私の密かな研究テーマになった。

醤油ラーメンにはACブルゴーニュ。あっさりした出汁に、軽やかなピノが寄り添う。
豚骨にはヴォルネイ。脂に負けないしっかりした酸が必要。
味噌にはジュヴレ=シャンベルタン。味噌のコクとジュヴレの力強さが、がっぷり四つに組む。
つけ麺には——まだ答えが出ていない。研究は続く。

深夜の東京を歩く友人たち

次のワイン会の後、一緒にラーメン行きませんか

もしこの記事を読んで「それ、やってみたい」と思った方がいたら。

次のワイン会の後、一緒にラーメン屋に行きましょう。
私がこっそりピノを持っていきます。

ただし、一つだけお願い。
この背徳を、ソムリエの友人には黙っていてください。

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