1. HOME
  2. ブログ
  3. コラム
  4. 秋のロゼは、夕焼けの色をしている

秋のロゼは、夕焼けの色をしている

ワインの色は、季節とともに変わる。——いや、変わるのはワインではなく、私たちの目のほうかもしれない。

春、まだ肌寒い夜に飲むミュスカデの淡いレモンイエロー。
夏、陽射しの下で傾けるヴェルディッキオの透明な緑。
秋、紅葉の窓辺に置くロゼの、なんとも言えない琥珀がかったピンク。
冬、暖炉の前で温まるバローロの深い赤紫。

同じワインでも、グラスの向こうに見える景色によって、色の印象はまったく変わる。
それに気づいた時、私のワインとの付き合い方は、少しだけ深くなった。

気づきは、10月のテラスで

きっかけは、ある10月の夕方だった。

ワイン会の仕込みを終えて、自宅のテラスで一人、残りもののプロヴァンスロゼを飲んでいた。何気なくグラスを持ち上げて、夕暮れの空に透かしてみた。

息を呑んだ。

グラスの中のロゼと、空の色が——完全に同じだった。

サーモンピンクにオレンジが混ざり、金色の縁取りがある。秋の夕焼け特有の、温かくて少し切ない色。グラスの中にもまったく同じグラデーションが広がっていた。

「ロゼは夏の飲み物」と思い込んでいた自分が、急に浅く感じられた。

夕焼けに透かしたロゼワイングラス

ワインの色は「見る」ものではなく「感じる」もの

ソムリエの勉強をすると、ワインの色の見方を体系的に学ぶ。

白ワインなら、グリーンがかった淡黄色から、黄金色、琥珀色へ。赤ワインなら、紫がかったルビーから、ガーネット、レンガ色へ。色調と濃淡で、ブドウ品種や熟成度を推測する——いわゆる「外観のテイスティング」だ。

それは確かに有用な技術だ。でも、それだけでは捉えきれない「色の体験」がある。

たとえば、桜の下で飲むロゼは、花びらの色と共鳴して、文字通り「花の味」がする。真夏のビーチで飲むアルバリーニョの薄黄色は、太陽の光を吸い込んで、より鮮烈に輝く。雪の日に飲む赤ワインは、白い世界の中で一層深く沈み、宝石のように見える。

色は単なる視覚情報ではない。環境と感情が混ざり合った、総合的な体験だ。

季節ごとのワインカラーパレット

ワイン会に「季節の色」を取り入れる

あの夕焼けロゼの体験以来、私はワイン会のセレクションに「色」という軸を加えるようになった。

秋のワイン会では、意識的にオレンジワインを1本入れる。ジョージアのアンバーワインや、フリウリのラマート。紅葉の季節に、琥珀色のワインをグラスに注ぐと、参加者は決まって「きれい」と声を上げる。味を語る前に、まず色に心を動かされる。

冬には、あえて若い赤ではなく、熟成してレンガ色に変わったワインを出す。冬枯れの景色と、ワインの枯れた色合いがリンクして、「季節を飲んでいる」ような感覚になる。

春は、新緑を映すかのようなソーヴィニヨン・ブランの淡い緑。
夏は、空の青さに映えるロゼのピンク。

一年を通じて、ワインの色は風景と対話する。

色が変わる瞬間を、目撃したことがあるか

もう一つ、忘れられない体験がある。

あるワイン会で、熟成ピノ・ノワールをデキャンタに注いでいた時のこと。注ぎ始めた瞬間のワインは、やや褐色がかった暗い赤だった。

ところが、デキャンタの中で酸素に触れ始めると、みるみるうちに色が変わっていった。暗い赤が、少しずつ明るくなり、透明感が増し、ルビーの輝きを取り戻していく。

まるで、長い眠りから目覚めた花が、ゆっくりと花弁を開くように。

「このワイン、今、起きようとしてる」

参加者の一人が呟いた。その表現に、全員が深く頷いた。

秋の夕暮れにワインを楽しむカップル

次のワイン会で、試してほしいこと

もしあなたが次にワインを飲む機会があれば、一つだけ試してほしいことがある。

グラスを持ち上げて、窓の光に透かしてみてください。

その向こうに見える景色——空の色、木々の色、街の灯り——とワインの色を、重ねてみてください。

きっと、そのワインの印象が少しだけ変わるはずだ。
そして、窓の外の景色も、少しだけ違って見えるはずだ。

ワインは、世界の色を映す小さな鏡なのかもしれない。

関連記事

目次